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無機固体材料の特性の解明及び新物質創出と機能性探索

  持続可能な社会を構築するためには、資源・エネルギー・環境問題を解決する新しい機能特性を発揮する材料の開発が期待されている。無機固体材料は多彩な特性(誘電性、磁性、光学特性、電気伝導性等)を示し、多くの新しい機能を実現する可能性を秘めた材料である。このような多彩な特性は材料の結晶&電子構造に起因していることが多く、基礎的な視点から特性を理解することは必要不可欠である。私は結晶構造的観点から材料の特性を理解し、得られた知見を下に新物質の創出と機能性の探索を目指している。

新規フッ化物イオン伝導体の設計

    フッ化物イオン(F−)をキャリアとするフッ化物イオン電池は市販のリチウムイオン電池の二倍以上のエネルギー密度(5000 Wh L−1)が期待されている。しかし、電解質に室温で高い導電率と広い電位窓を持つF−伝導体はまだ見つかっていない。

    私は結晶構造内にF−以外の異種アニオンや孤立電子対を持つカチオンなどを導入することで、材料探索の幅を広げ、その伝導メカニズムを解明し、高性能F−伝導体の設計指針を確立することを目指している。

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J. Mater. Chem. A 2024, XX, XXXX.

Chem. Mater. 2023, 35, 4235-4242.

これまでの研究

@京都大学陰山研究室

​孤立電子対を用いた構造・物性の設計

    Pb2+, Bi3+などのカチオンには立体障害を起こすns2孤立電子対が存在し、結晶構造を変化させる"Chemical Scissors"として知られている。このような特異なカチオンを含む物質の構造・物性の理解及び設計に携わっている。

    例えば、高圧合成で得た新規化合物BiSFは、減圧中に孤立電子対が活性化され、結晶構造を歪ませる(Chem. Mater. 2024, XX, XXXX.)。層状ペロブスカイトBi4NbO8Brは孤立電子対によって層内に大きな分極(43.5 µC/cm2)が引き起こされる以外にも、層状ペロブスカイトでは珍しい層間の分極を持つ(Inorg. Chem. 2022, 61, 9816-9822.)

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Chem. Mater. 2024, XX, XXXX.

Inorg. Chem. 2022, 61, 9816-9822.

​新規層状酸ハライド光触媒の開発

    蛍石二層と蛍石が組み合わさったBi4BaO6Cl2及びそのCa, Sr置換体Bi4AO6Cl(A = Ba, Ca, Sr)が有望な水分解光触媒として機能することを発見した。DFT計算によって得られたBi4BaO6Cl2のバンド構造からは光励起電子と正孔が蛍石二層と蛍石三層を別々に伝導することが示唆され、異種層の組み合わせで光励起キャリア伝導を制御する新しい光触媒の可能性を見出した

演示文稿1.tif

Inorg. Chem. 2021, 60, 15667-15674.

極性構造と光励起キャリアの相関の探索

    極性構造中に存在する分極は光励起電子と正孔を逆方向に分離し、キャリアの再結合を抑制することが提案されている。しかし、結晶中の光励起キャリアダイナミクスについては、実験的証拠に基づく知見はまだ皆無である。

    私はBi4NbO8(X = Cl, Br)の単結晶において複雑なナノスケールのドメイン構造(分極が一定の領域)を発見し、光励起キャリアとの相関性を探索した。

演示文稿1.tif

Inorganics, 2018, 6, 41.

Appl. Phys. Express, 2020, 13, 091004.

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